NGK Collaboration Square DIVERS

愛知県名古屋市熱田区六野1-307
 特徴的なルーバーの外観となっているが、敷地内のこの建物の周囲にある中層建物と比較すると、前面道路から見たときのボリュームが小さく、うまく調和していると感じる。
 日本に初めてもたらされた碍子の形状を模した大きな3層吹き抜けは、内部の木材の部材寸法が統一された内装によって、とても魅力的な空間となっていた。また、日射コントロールから導かれたカーテンウォールと、その外側のルーバーの形状の効果は十分に感じられ、さらに内部空間から豊かな外部の緑化空間への視線の抜けが心地よい。複雑な形状であるため施工も丁寧な仕上げがされており、また企業のメンテンナスも行き届いている。
 この建物は、会社外の人とこの企業をつなぎ、あるいは社内の人々同士の新たな交流や事業を生むスペースであることが目的であるため、3層吹き抜けの周囲に、この機能を持つ諸室が配置されている。現地審査の当日も、多くの社員、来客が利用している様子が見られ、建築が十分に活用されていると感じた。
 大きな吹き抜けは、床タイル目地の隙間からの吹き出しで居住域のみを空調し、全体のエネルギー消費量を抑える工夫がされている。挑戦的な取り組みであると感じる一方で、床タイル目地の隙間にモノが落ちても拾えないことや、下からのドラフトには心理的な抵抗感を持つ場合も考えられるなど、未知な部分もあることが考えられ、運用を継続するなかで、設計者、施工者による持続的な検証が重要であると感じる。 (櫻木 耕史)
 名古屋市に本社を置き、セラミック製品を製造、全世界で事業展開するメーカーの交流施設。「オープンイノベーションの推進」と「グループアイデンティティ浸透」を目的として建設され、環境効率の向上を図ったデザインや、エンボディドカーボン削減を意識した材料選定が行われている。計画では、熱田神宮から神宮東公園を経由する緑地帯との連続性に配慮がなされた。敷地内に緑を取込むため、施設は南東面を円弧にした、開かれた形態を持ち、アプローチ動線、円形広場のある前庭空間が、訪れる人を招き入れている。新堀川沿いの西に位置する敷地周辺は、大型施設が点在し、必ずしも市民になじみのある場所とは言えないが、道路を挟み、南側には名古屋市体育館がある。
 現地には、良く晴れた平日の午前中に訪れた。日射遮蔽ルーバーが取り付けられた曲面のファサードと30°傾斜ガラスで構成された建物は、施設のボリュームを和らげている。アプローチの動線は、緑に沿って設けられ、庇の高さと幅を建物に向けて絞ることで、適度な緊張感を与えながら建物に導く。内部は回遊性を伴う吹抜け空間を介して、性格の異なるスペースが適所に配置されている。カーテンウォールの視線の抜け、日射と視線を巧みに制御した傾斜アルミルーバーの意図を体感することができた。吹き抜けを含むオープンスペースは、見付け18㎜のオーク材による天井ルーバーが全面取り付けられ、同じ見付け18mmのオーク材を積層にした壁面と一体化し、柔らかさと繊細さを感じさせる。また、北側と西側のフロアレベルに差をつけ、スキップフロアの構成にするなど細やかな配慮も見られた。
 あえて気になったところをあげれば、外観のディテールであろうか。近づいた時に見えてくる、陰影、質感、仕組みなどをもう少し期待していた。また、業務関係者だけではなく、地域との交流があるとさらに良かったと思う。
(森 哲哉)
主要用途 自社ビル
構  造
鉄骨造
階  数 地上3階
敷地面積
71,537.11㎡
建築面積
2,195.88㎡
延床面積
4,415.84㎡
建築主 日本ガイシ株式会社
設計者 株式会社日建設計一級建築士事務所
株式会社日建設計
施工者 清水建設株式会社 名古屋支店

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