愛知学院大学 末盛キャンパス
愛知県名古屋市千種区末盛通2-11 |
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敷地の高低差が大きく、公開空地を斜面で計画している。さらに、斜材で上部構造を支えることによって、屋根のある公開空地ができているのが大きな特徴である。インパクトのある斜材であるが、この敷地を活用する上では、とても有効な計画となっている。また、この空地は敷地東の谷側にあるため、昼間は建物の影がおち、日射をうまく遮ることができて効果的な空地とすることができている。 四周が丸みを帯びた平面は、法的条件を解決するための必然から生まれている。開口部の水切りは丁寧な処理がされており、外壁面の水滴汚れは目立たない。 医療系学部は、国家試験が最後の砦となっている。そのため学生たちの能動的な学びの環境をつくることがこの建物にも求められている。学生が自由に使えるホワイトボードやお互いが見える廊下部分をガラス開口とした諸室の計画は、多くの高等教育機関で使われており目新しいものではない。学びの環境と学修成果の可視化のため、環境の変化前後で比較を試みようとしても学生の成長や個性もあり因果関係を捉えることが難しいが、実際に国家試験合格率の向上などの成果が得られていることは、このような設えの有効性を示していると考えられる。 公開空地で過ごす環境として、現状の植栽量や樹勢でも違和感がない。そのため、経年による樹勢の拡大、根上がり、建物下部への影響などを見ながら管理していくことが必要であろう。また、公開空地の豊かさに反し、敷地西北側の巨大なコンクリート擁壁の存在感が気になった。緑化を取り入れるなど存在感を低減する工夫があるとさらに良いと感じる。 (櫻木 耕史) |
敷地は表通りに面した歯学部施設の裏側にある、かつて歯学部の駐車場であった所に位置し、まわりは生活道路で囲まれている。またこの地域は古くから「月見坂」とよばれ、その名の通り坂が多い。けっして恵まれた敷地条件ではないが、周辺環境を丁寧に読取り、地域とつながりのある提案がなされている。 設計手法として、総合設計制度の公開空地を活用し、東側に開かれた緑地帯を設けている。裏通りにあるため許可を得るのに苦労されたそうだ。許可を得るためには斜め柱にする必要であったと説明を受けた。この緑地帯は東側の道路から西に向かい、丘のような形状をしており、その中を敷地北側の生活道路につながるスロープを通しているところに特徴がある。これにより緑の丘でくつろぐ学生と、地域の人が自然とふれあうことになる。名ばかりの公開空地とは違い、地域との関係に配慮された緑地帯が創出されている。 地形を取り入れた計画は、空間断面にも見て取れる。1階部分から2階につづく緑地帯をぬけ、内部のオープンスペースに入ると、3階までゆるやかにつながる。構成としては1階から3階までを学生利用のフロア、4階から6階を研究実験フロアとしている。断面構成は外観にも表れ、学生利用のフロアは黒いサッシのガラス張り、研究実験フロアは構造体を外に出した格子状の白い外壁となっている。 この浮いたように見える白い格子状の外壁は、旧東京中央郵便局(吉田鉄郎)を思いおこさせる。構造体を外に出すアウトフレームのデザインは、初期の近代建築に良く見られる。研究室フロアの東側は眺めが良く、目の前の丘の上に昭和塾堂(1928年竣工)が見える。周辺にも同年代につくられた楠元学舎、揚輝荘などがあり、どこか懐かしい近代建築へのオマージュのようにも感じられた。眺めが良いということは、同時に見られることでもある。この地域のランドマークとなる建築だと感じた。 (森 哲哉) |
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