薬師田の住居

愛知県安城市
  市街地からさほど離れていない田園集落に建つ住宅である。現代の画一的である種過剰な住宅に対し、人間が本能的に求める原点回帰的な住宅を提案している。
 この住宅の構想は古墳群や遺跡などが多く点在する地域の歴史から始まっており、建築家自身が発掘調査に参加し住居跡の遺構を発掘する過程で竪穴式住居に構想を得て、自然エネルギーのポテンシャルを活かした温熱環境計画を行い、家族団欒の場を提案している。
 塔屋のハイサイド窓と9/10勾配の屋根が印象的で、木立の中に佇む姿はなぜか懐かしさ覚える外観である。深い軒は内でも外でもない中間領域をつくり出し、多様で豊かな空間の可能性を持っている。建物は春から夏にかけて吹く南南東の自然風を取り込むように配置され、敷地境界線との振れ角度が外部空間に変化を与え、周囲の庭を繋げている。
 内部空間は中心に家族の集まる茶の間を配し、それを囲むように広縁、水廻り等がある。茶の間には櫓構造の4本柱が鎮座しており、柱頭部を繋ぎ梁で繋いで開き止めとしている。茶の間は床を下げることで視線が低くなり安堵感が生まれ、家族を団欒の場へと導いている。2階は個室で構成され、その狭さと暗さが茶の間へと家族を誘導する意図とされるが、不便さを楽しむこともできる。
 自然風、地熱、空調設備機器を組み合わせての温熱環境計画は、自然風を最大限に活用し空気の流れる室内環境をつくり重力換気で排熱をすることを基本とし、床下と吹抜け部にエアコンを設置し、全館空調のためにダクトファンを床下に設置し、地熱により床下の空気を混ぜ室内に還元し熱負荷の軽減を行うことで快適な温熱環境をつくり出そうとしている。地場産材の利用、自然素材へのこだわり、緑の環境なども含め総合的に評価するものである。 (筒井 裕子)
 その建物は周囲の街並みの中ですぐに目についた。植樹に囲まれた敷地の中央にまるで茅葺の、正に“竪穴式住居”のように建っていた。敷地に対して少し建物軸をずらすことによって得られた、少々いびつではあるが、しかし多彩な庭の木々を楽しむ仕掛けが楽しい。この多彩な植樹と人工的に造った築山のおかげで、外部からの視線を緩やかに遮っている。庭石や周囲のアプローチの敷石には、地場の特産である幡豆石(はずいし)がふんだんに使われているところも魅力的だ。
 建物の構造はいたってシンプル。2250mm角のグリッドで構成されており、中心は4本の180mm角の柱による櫓構造である。この櫓に対して四方から登り梁をかけて矩勾配に近い方形屋根となっている。櫓の中央には茶の間を置き、周囲に諸室を配置した平面構成はコンパクトに纏められ、見るからに使いやすさを感じとれる間取りである。そして、方形屋根の屋根裏に寝室と子供部屋の2階がある、という仕掛けだ。この屋根裏部屋は見るからに狭い。これは意識的に、個室を居心地の悪い空間とし、出来るだけ寝る以外の時間を、家族との関りを持てるように意図したものだと言う。寝るだけなら穴蔵部屋で充分か、とも思うし、押入れの様な狭い空間に妙に懐かしさを覚える感覚もある。
 室内の温熱環境の構築については、冒頭の“竪穴式住居”を手本にしたという。中間期は、地域の年間風向データを元に開口部や重力換気などを設け、大きな空気の流れを創り出している。また夏冬に対しては、床下空間の地熱の伝わりを利用し、夏用エアコン、冬用エアコンの位置どりと、ダクトファンの設置によって室内の環境を調整している。空調機に頼りすぎない仕組みが成功している様である。 (松本 正博)
主要用途 一戸建ての住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
247.98㎡
建築面積
69.63㎡
延床面積
86.86㎡
設計者 岩間建築設計事務所
施工者 一色建築
詳細は応募者のホームページを
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