竹中工務店静岡営業所

静岡県静岡市葵区昭和町6
 近年のオフィスにおける省エネ手法の要素技術は大きく進展してきた。外部環境に近いが負荷の大きなペリメーター空間を主要なワークスペースとはせずに、ミーティングスペースなど比較的空調制御の幅を許容できる空間とすることで省エネを図る手法なども見られる。このような手法は、その空間の特徴と、人の環境行動を丁寧に読み解いた計画と言える。
 本作品の特徴は、その湾曲したスラブの形態の特徴はいうまでもなく、オフィスの使われ方とともに計画されたことにある。営業などの職種はオフィスでの滞在時間が短く、固定席である必要性も低い。外部の様子を感じながら短時間で必要な執務を行うといったワークスタイルが想像される。デザインの特徴となっている湾曲したスラブは、ペリメーター側に開き、外部環境の変化の大きい空間を積極的に居場所として構築することで、空間の使われ方に対応したデザインが高度に統合され、ヒートブリッジを最小限に抑えるディテールにも配慮されている。
 東海地震に備えた柱頭免震とともに、災害に対する配慮として天井がないことで特定天井へ配慮が不要になる点もメリットのひとつだろう。床下に設けられた設備機器は居住域を空調するとともに、  施工性の面でも小規模オフィスとの相性がよいように感じた。
 合理的に解かれた湾曲スラブの強い形態が、今後どのようにデザインとして展開するか期待したい。
(金子 尚志)
 静岡市の中心市街地の西の幹線、昭和通り沿いに「しなやかに」建っている。繁華街のはずれ、高層のホテルやオフィスビルの中にあって、3階建ての本ビルは「つつましく」建っている。
 静岡駅から歩いて5分ほどの場所に3階建てとは、少しもったいない気もするが、全員参加のワークショップによるニーズの確認とこれからの働き方を検討した定性調査と、必要ボリュームの確認とより精緻な運用方法を検討した定量調査により、過剰な投資を避けることをめざした結果、旧営業所の延床面積750㎡から360㎡までの縮小が実現したという。
 しなやかに、そしてつつましく、という印象が評価のポイントであると考える。4本の柱に柱頭免振装置を設け、スラブをたわませることで強度を持たせ、梁不要のワンスパン架構を可能にし、19.5mスパンの円筒スラブを実現させた。
 円筒スラブは、中央が下方に膨らんでいるので、圧迫を感じさせるのではという懸念は、実空間で解消された。外側に開く天井形状と天井面に沿った自然光により広がりを感じさせるのだ。  円筒スラブの床下空間にはすべての設備機器を収納し、床下空調とすることで居住性の向上を図っている。すっきりした天井面は吊材がなく、だから震災時の落下の危険がなく、また日常の機器メンテナンス時の高所作業の不要を可能にした。
 円筒スラブは、そのコンクリート打設においても滑らかで目違いのない美しい曲面の打ち放しができるか、くし型枠案と曲線加工大引案の2案を作成し、モックアップで仕上がりを確認の上、後者案で実施している。これらの設計、施工の検討は、汎用性が可能なことを示しているといえる。他の場所、他の地域で円筒スラブが出現するのか、興味を持って見守りたい。
(塩見 寛)
主要用途 事務所
構  造
鉄筋コンクリート造・鉄骨造
階  数 地上3階
敷地面積
266.43㎡
建築面積
160.06㎡
延床面積
361.09㎡
建築主 竹中工務店
設計者 竹中工務店
施工者 竹中工務店

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