金沢の家

所在地 :石川県金沢市
 北陸の気候条件、および夫婦のライフスタイルを重視した独立住宅である。住宅密集地にあり、前面道路も細街路となっている立地条件の中、目を引くのが急勾配の緑の大屋根である。住宅の配置は、前面道路からセットバックして建てられているため、大屋根による圧迫感を周囲に感じさせない。また、緑も落ち着いた色合いで仕上げられており、奇抜な印象を与えていない。むしろ、広く取られた前庭・来客用駐車場は密集地区に空間的なゆとりを提供している。
 大屋根の下は室内庭(土間)とそれに繋がる2階の室内テラスがあり、屋外と生活空間の中間領域として機能している。大屋根はこの吹抜け空間にさらなる高さを加えるとともに、後方部分の屋根とのズレからガラス面を通しての大きな採光を取り入れている。大屋根の角度は冬至でも十分な日射が得られるよう検討されているため、年間を通じて明るく大らかな空間となっている。このほか、深めの庇は前面に対する適度なプライバシー確保の空間装置ともなっている。
 北陸では伝統的に中土間を持つ建物も多く、冬の厳しい気候に対する環境調整の空間として機能させているが、この住宅の室内庭はこれを現代建築に取り入れたものとなる。さらに、この空間は前庭と連動して使われたり、奥のリビング・ダイニングと連動して使われたりと、生活行為や来客者、近隣との関係に対して、自在で多様なアクティビティを創出させる空間領域となっている。
 以上、狭小住宅ながら空間の広がりや明るさが感じられ、生活行為の豊かさや快適さを提供する優れた住宅建築と評価できる。
(川﨑 寧史)
主要用途 専用住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
394.66㎡
建築面積
175.28㎡
延床面積
224.01㎡
設計者 中西昭太建築事務所一級建築士事務所
施工者 道場建設株式会社

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