福井県年縞博物館

所在地 :福井県三方上中郡若狭町鳥浜122-12-1
 元来、建築は地域の歴史や文化、風土の中で、手近に得られる材料やその土地の人々によってつくられ、育まれてきたものである。福井県年縞博物館はまさにこうした建築本来のあり方を示す格好の作品といえる。当博物館は、眼前に広がる三方五湖の水月湖の水底34~45mメートルに積もる年縞の展示、解説施設である。約7万年間に及ぶ年縞に含まれる花粉やプランクトンなどを解析することによってはるか古代の気候や自然、環境を想定できるという。我が国では唯一稀有の博物館であり、世界でもまれな施設である。
 長さ40数メートルに及ぶ切妻屋根の展示館棟は1階をピロティとし、奥方に湖面が望める。2階には年縞の実物資料が展示され、木造・鉄骨のハイブリッド構造をみせる長い空間も印象的である。博物館といえば、周囲を壁で閉ざして閉鎖的であるが、当博物館は四周をガラス張りのカーテンウォールとし、内部からも湖や周囲の山々が望め、いたって開放的で、建物の内外ともに周囲の景観、環境と一体化している。内装材には福井県産の杉材がふんだんに使われ、コンクリートの型枠にも使用。1階ピロティの打ち放しコンクリート柱や壁には杉の年輪も表れている。また、コンクリートの流し込みには型枠表面を傷めないよう竹を用いて丁寧に処理したという。さらに施工はすべて地元の業者が請け負っていて、この施設は地域ぐるみで生み出された。
 当博物館がたつ場所は縄文期の鳥浜貝塚が発見されたところで、平成12年開設の縄文博物館もある。この二つの博物館が一体となって様々なイベント活動も展開し、地域民はもちろん古代に夢をはせる多くの人々に古代へのロマンを供与し、地域の活性化にも大きな役割を果たしている。年縞はまだ十分に周知しているわけではないが、開館1年目で入館者は10万人を超えた。環境問題が叫ばれている今日、当博物館は奥越勝山市の恐竜博物館とともに福井県の大きな目玉としてますます注目を高めていくことは疑いない。
(吉田 純一)
主要用途 博物館
構  造
鉄筋コンクリート造、鉄骨造、木造
階  数 地上2階
敷地面積
6409.31㎡
建築面積
1,929.76㎡
延床面積
1,779.35㎡
建築主 福井県
設計者 株式会社 内藤廣建築設計事務所
施工者 株式会社 前田産業・株式会社 ともえ屋 水月湖年縞研究展示施設(仮称)建築工事特定建設工事共同企業体

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