第50回 中部建築賞 入選・入賞 作品選評

審査総評
 中部建築賞の審査員長をお引き受けして3年目を迎えました。
 今回の応募作品数は昨年より少し減りましたが、総数は93作品となりました。一日かけての書類審査で絞り込み、さらに手分けして、現地審査を行いました。現地審査の報告をもとに、様々な角度から再度検討した結果、一般部門で10作品、住宅部門で9作品、さらに特別賞として1作品を今年の中部建築賞受賞作としました。
 私は書類や図面や写真での審査も重要ですが、現地審査を重要視しています。そして、現地審査にあたり、見究めるべき建築評価基準は大きく三つあるように思っています。「佇まいが良いかどうか」「顔つきが良いかどうか」「居心地が良いかどうか」の三つです。実はこれらは現地に行って、実際にその建築を体験しなければ、なかなかわからないものです。
 まず「佇まいが良いかどうか」は、周辺環境との関係によって決まります。「あたかも以前から、そこにあったかのような安定感がある。」「周辺環境に馴染みながらも、固有性が発揮されている。」あるいは「その建築を取り巻く周辺環境全体が一体的なものとして活性化されている。」などです。このように、周辺環境との対話が充分なされた建築は、「佇まいの良い建築」として評価されます。
 二つ目は「顔つきが良いかどうか」です。全体の姿や形が美しいのはもちろんですが、その建築を特徴付ける「顔つき」は重要です。人間でいえば「目力(めじから)がある」「鼻筋が通っている」「眉がりりしい」・・・。すべてではなくとも、一部分でもその建築を魅力あるものとして特徴付ける「顔つき」です。その建築に相応しい「顔つき」は記憶に残る建築としての評価につながります。
 最後に「居心地が良いかどうか」です。公共建築においては「居心地の良さ」はその公共性と密接に関連しますし、一般の建築においても、利用者にとっての「居心地の良さ」はその建築の価値付けに大きくかかわってきます。ましてや、戸建住宅や共同住宅においての「住み心地の良さ」は必須の条件でしょう。住空間に見合った住まい手のライフスタイルや、住みこなし方の見事さに、驚かされた作品も多くありました。  今回受賞された作品は、これら三つの評価基準において優れたものであり、深い感銘を受けたものばかりでした。
(栗生 明)

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