所在地 :三重県鈴鹿市神戸3−17−5
  三重県鈴鹿市に位置するカトリック教会の建て替えである。敷地は幹線道路から奥まっており、この教会はロードサイドショップなど大きな建築に囲まれた雑駁な環境に建設されている。自動車関連工場で働く多様な国籍の信徒が増え、教会の拡張が必要になった。同時に、新たなコミュニティの場としてのシンボル性も求められている。
 この建築は、こうした「祈り」の空間としての「崇高な精神性」と、「集い」の空間としての「包み込むような親和性」の共存という、難しい要求に見事に答えている。信徒のほとんどが車での来訪と考えられるため、大胆に一階部分を可能な限り天井高を抑えつつ、全ピロティとして駐車場に開放している。
 一方、聖なる空間である聖堂、信徒会館、司祭館(神父の住居)などはアクセスし易い高さの中空に浮かし、広くゆったりとした階段によって繋いだ解決法は理にかなったものである。
 駐車場の寸法から5メートルごとにモジュール化され、連続しながら分節、変化する大きな屋根型は、どの方角から眺めても、たとえ近隣の建物の隙間から垣間見えたとしても、教会としての存在感を伝える「魅力的な都市のアイコン」になっている。同時に、このシステムは、内部機能に対応した天井高を確保しつつ、そのずれを有効な自然採光、通風に利用するなど、さまざまな空間効果をあげている。
 神聖な聖堂に連なる信徒会館は可動間仕切りを開放することで、ロビー空間と一体となって、ミサや結婚式、葬儀など多人数が集まる「屋内広場」と言えるものに変化する。同様にバーベキューパーティなどに使われる南側の広場、この鈴鹿教会に伝わるルルドのマリア像がある西側の庭もピロティ空間と一体となった「外部広場」として街に開かれている。
 つまりこの建築は内外が連続する「立体広場」として地域とカトリックコミュニティを繋いでいるのだ。構造、設備の合理的な計画によりローコストに抑えられながら、カトリック教会に相応しい清浄で品格のある空間が実現している。
(栗生 明)
主要用途 教会堂(寄宿舎つき)
構  造
鉄骨造
階  数 地上2階
敷地面積
1,619.53u
建築面積
839.51u
延床面積
1,588.85u
建築主  宗教法人
 カトリック京都司教区
設計者  株式会社
 アルファヴィル
 一級建築士事務所
施工者  松井建設株式会社
 名古屋支店

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