所在地 :愛知県豊田市
 豊田市駅から北へ約12q、梅坪駅近く、戸建住宅や集住体が無表情に並ぶT字路の交差点を、南に真っ直ぐ望む、矩形の敷地に、強いアイデンティーを発して、この住居は建っている。応募資料から、淡白な日本的な空間構成とは異質な、ラテン文化圏の自由を謳歌する、ダイナミックな空間構成を志向する住居と読み取れる。クライアントは、どのような家族であろうかと、現地審査に赴いた。オーストラリアのシドニーでの生活経験があって、おおらかな空間を希望され、建築家は、そこを訪問して要望をくみ取ったという。玄関扉を開けると、広めの土間、奥に坪庭、そこを介して、更に奥には、半層上がった小スペース/カフェルームが見える・・・1つ目のルート。玄関土間でも、訪問者と腰を下ろして、緑と空を感じながら、談話ができる。ここから、階段を昇ると、リビング廻りの主空間へ至る・・・2つ目のルート。階段下に回り込むと、家族用のクローゼットからキッチン・ダイニングへのショートカット・・・3つ目のルート。時と場合、気分に応じてルートを変える。クローゼットからストレージへ、更にカーポートに出る裏口。主空間は、への字に身を捩ったような概形。ステップステージからスカイデッキ・リビング・キッチンへと、半階分のレベル差と、QUALIA「感覚質」の差異をもって連続する、この住居のテーマを体感する大きな内外空間。ここから、東、西、北にライブラリーやバルコニールーム、ウィンドテラス等の小空間が派生。大小それぞれの空間から望む眺望・景色は異なり、差異を巡るすまい・・・モクロミを読むことができる。規則性・予定調和系空間か、自前のプロトコルによる複雑系空間かは、それぞれの建築家が抱え込む命題の多寡でもあり、設計スキルを計ることができる。だが、応募資料のダイヤグラムと実態との間の齟齬が気になる。 ・ダイナミックな空間構成に、LからDへの階段は重要    ・・・踏面・蹴上寸法が普通すぎる ・「への字に曲がって南北に抜ける」とあるが、主空間が北に抜けていない     ・・・抜けてこそ、への字が生きるのに ・・・貪欲な空間だけに残念。
(笠嶋 淑恵)
主要用途 住宅
構  造
木造
階  数 地上2階
敷地面積
260.65u
建築面積
112.52u
延床面積
166.16u
設計者  clublab. 
  丹羽 哲矢
  丹羽 倫子
  恒川 景子
施工者  有限会社 小林工務店
  小林 貞雄
  小林 孝夫

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