第42回 一般部門 入賞

所在地 :愛知県西尾市幡豆町寺部字小浜69
 このグローバル研修センターは、文字通りグローバルな人材育成にむけて、国内外の企業幹部の研修(宿泊あり)を行うために建設された施設である。企業本社は刈谷市にあり、そこから車で1時間程度の時間距離ながらも、喧騒を離れ、270度の三河湾の穏やかな海を眺望できる好立地条件にそれはある。日常業務から離れて、研修に集中させる抜群の環境条件を有している。
 この種の施設は、規模が大きいだけに周辺への影響も大きく、どのような理念あるいは姿勢で整備したのかは、企業イメージを大きく左右する。
 環境への配慮については、環境負荷の低減にしろ、環境性能の向上にしろ、今ある高水準な技術が惜しみなく投入されている。特筆すべきは、この豊かな風景の阻害要素とならぬよう、風景に溶け込ませる努力が払われていることだ。敢えて建物を小さく見せるために、正面の海に面した研修施設は3層に抑え、宿泊施設は3〜7層なので研修施設に対し垂直、すなわちT字型に配置して、面積の小さい側面を正面に出すことでボリューム感を低減させることに成功している。しかも270度のパノラマは宿泊施設からの眺望も妨げない。
 大小様々なタイプの研修室・会議室が用意されている。同時にロビーやホワイエ、コミュニケーションゾーンと称する休憩兼交流の空間も適度に配置されることで、集中と開放、研修と交流という対比が心身を刺激する。コミュニケーションゾーンには3種のタイプの異なる「車座」が6つ配置され、本音で語り合える空間を演出している。さらには開放的で眺望抜群な浴室、ゆったりとした食堂もそのような効果が期待できよう。
 地域との共存も忘れていない。ホール等は地域に貸し出され、既存緑地を最大限保持しながらも新規に造成したところもあり、ミカンの木が植えられ、市民に開放される。
 群を抜く眺望を持つ敷地に、環境に配慮し、細部まで質にこだわった建築物、そこには大きな研修成果を期待させる迫力がある。
(井澤 知旦)
主要用途 宿泊施設をもつ研修所
構  造
鉄骨造
階  数 地上7階
敷地面積
70,051.78 u
建築面積
5,635.07 u
延床面積 14,548.95 u
建築主 株式会社豊田自動織機
 取締役社長 豊田鐵郎
設計者 株式会社竹中工務店
 名古屋一級建築士事務所 
 設計部長 相川俊英
施工者 株式会社竹中工務店名古屋支店
 執行役員支店長 西山 正直

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