中村中町の家

所在地 :名古屋市中村区
 中村中町の家は、秀吉の生誕の地である中村地区(JR名古屋駅の西)にあり、この辺は低層の住宅に処々中高層の共同住宅が建ち並び、狭い道路が迷路の様に綴る住宅密集地である。
 住まいの形式は古くから日本の市街地に見られる民家の典型である中庭方式の平面で、敷地を一杯に活用しながら住戸の独立をはかり大小の中庭を設けて快適な採光と通風をはかっている。1階にプライバシーを要求される個室を設け、2階に居間等日常生活の中心となる共用部分を配置している。
 構造は、鉄筋コンクリート造と木造の混構造を採用して、夫々の素材のもつ特性がうまく生かされている。鉄筋コンクリートは、市街地での防災即ち地震や火災だけでなく、音や振動の遮断にも有効に活用され、木は私たちが一番使い慣れた材料として、自由な架構を共用部分の空間構成に生かしている。仕上材としての対比も美しい。特にこの混構造は、設計者の得意とする構造形成の一つであるとのことであるが、その採用にあたっては、提案と同時に既に建築されたものを建築主に示して了解をとられたとのこと。特に材料の特性、例えば鉄筋コンクリートの結露や、木材の収縮のことなど十分な説明がされていた様である。その上工事はこの構造を経験してよく理解している施工者にゆだねられた等、建築を作る当事者(建築主、設計者、施工者)の理想的な関係を見ることができた。案内いただいた建築主の満足度はほぼ100%に近い様に感じられた。
 市街地の住まいとして、住戸のプライバシー(私)と、街並景観や近所とのおつきあい(公)との調和をはかるために公道に沿って設けられた細やかな植栽や、道路に面したコンクリートの壁に設けられた開口のとり方にも、建築主の見識とは言え、それに応えた設計者の「術」は、大いに評価できるものである。  
(森口雅丈)
構  造
混構造
(鉄筋コンクリート造+
木造)
階  数 地上2階
延面積 
159.00u
設計者  設計工房 蒼生舎
 代表 尾崎公俊
 
施工者  株式会社 興栄技建
 代表取締役 安井清明
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