浜松いわた信用金庫竜洋支店

所在地 :静岡県磐田市豊岡6858

 主要な前面道路側は建物の側面であり、引き込んだ駐車場に対して伸びやかな正面を見せている。中央のロビーの両側に打ち放しコンクリートの円筒の断面が据えられて、それを結ぶように上向きのアーチ型の屋根が掛けられている。大きく両腕を広げて客の来行を出迎えている様に横綱の土俵入りを思い浮かべた。ロビーの天井面は木板で仕上げられて柔らかい雰囲気づくりに貢献している。ロビーと駐車場の間は全面ガラスで開放的で、その前には舞台状の段が設けられている。地域のイベントの場としても活用されているという。コミュニティとともにあるという発注者の経営姿勢が示されて好ましい。
 この半世紀で金融機関の店舗は、かつての堅苦しく荘重な雰囲気を脱して明るいオフィス空間に変貌したのだが、ここでは小さいながらも建築的なドラマが盛り込まれ、気軽に利用できる地域の施設として進化している。浜松いわた信用金庫をウエブで拝見すると、竜洋支店以外の店舗もそれぞれ建築的な個性を競っている。伺えば同じ設計者が担当されているよし。発注者と建築家が信頼関係で結ばれ、地域に素晴らしい建築が実現していることはまことに喜ばしいことである。
 ところで、実際現地で拝見するまではロビーの逆アーチの屋根は両側のコンクリートの円筒から吊られていると無意識に思い込んでいた。実際は途中に鉄骨の柱を配置する柱梁の構造形式であることを知った。長大スパンに挑戦をしない判断に異論はない。また柱梁が目につかないように巧みに処理もされている。しかし、屋根の両端の納まりが左右で異なるなど吊り構造と考えると不自然な形態処理も目に付く。いかにも吊り構造であるかのように見えるのだから、緊張感を解かず最後まで形態を制御されれば、建築造形の論理という点からも素晴らしい作品になったと感じる。
(大野 秀敏)
主要用途 金融機関
構  造
鉄筋コンクリート造、鉄骨造
階  数 地上2階
敷地面積
2,126.39㎡
建築面積
657.30㎡
延床面積
819.57㎡
建築主 浜松磐田信用金庫
設計者 株式会社 日建設計一級建築士事務所
施工者 株式会社 イトー

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