HINO

所在地 :岐阜県岐阜市
 今から40年ほど前に分譲された住宅団地の片隅に、背後に崖状の傾斜を抱えた土地があり、そこが当該作品の敷地となった。南向きでもなく整形でもないが、前面道路の対面(崖地の反対側)に開放的な小公園があるのが敷地としての魅力になっている。
 応募作品の外観上の特徴は、コンクリート壁式構造の上に木造フレームが乗った混構造にある。しかし、この作品にはそれだけにとどまらないユニークさがある。壁構造部分を版築のようにレイヤー状に積みながら外側に向かって迫り出していく外観形状にしている。その外観から内部空間を予見することは難しいかもしれないが、月並みでないことはわかる。その実態は内に入ってみないと理解できない。外部には小さな軒下空間もできていて良い。
 室内の特徴は、いくつもの小さなスペースがばらまかれるように分散され、その一つひとつが異なったレベルで壇状につながっていることである。外観からは想像されない。パブリックな部分においては、その小さなスペース間に壁があるわけではないので、ワンルームの家といった感じで、閉鎖感や圧迫感は感じない。それぞれのスペースの分割のサイズ感もヒューマンな感覚がして良いと思う。1階は構造的な理由によって窓は設けられていないが、上階の開口から落ちて来る光によって家中に光があふれている。平面的な広がりと共に立体的な広がりを感じることができる。
 敷地の特徴や規制を生かしたユニークなアイディアが、楽しい生活のステージを作り出したことは間違いない。ただ、レベルが多いということが家族の将来の生活の中でどのようになるか、気がかりな部分も残る。オールガラスの壁面(開口)も最近の傾向で建築としてはとても魅力的だと思うが、生活が露出してしまうという逆現象が伴うことも少し気になるところである。
(関 邦則)
主要用途 専用住宅
構  造
鉄筋コンクリート造+木造
階  数 地上2階
敷地面積
416.18u
建築面積
122.59u
延床面積
162.95u
設計者  武藤圭太郎建築設計事務所
施工者  安田建設工業 株式会社

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