所在地 :愛知県大府市
 名古屋から車で30分ほどの郊外、車の通行量の多い道路に面する敷地だが5mほどの階段を登りたどり着く雑木林の中のすまい。町の喧騒を忘れる避暑地の中にワープしたかのような不思議な感覚に浸る。
 地山で大きく育った樹木を最大限残し、そっと添える様に建物が存在しており控えめで昔からあるかのように環境に馴染んだ佇まい。高低差のある雑木林の中に建てる住宅の施工は、資材の搬入からして大変であったと想像つくが、苦労の跡を感じさせない端正で熟成された印象を持つ。
 建物の構造は木造二階建て、垂木が連続する切妻の大屋根の下に配置された巣箱のような各部屋があり、箱と箱の間が舞台のように大きく開放された空間で、リビングなどのパブリックな居場所となっている。
 南北にデッキテラスを設け、開口部が全面開放されることで境界がなくなり自然と一体化される。風が家中を駆け巡り、木立から柔らかな光が降り注ぐ。深い軒とデッキに挟まれた形で見える樹木の風景は時間ごとに変化する絵画のように美しい。毎日遊びに来る小鳥を眺め、太陽が織りなす光と影の動きで1日の移り変わりを味わい、樹木の靡く音や香りで季節を愛でる。
 夏は自然の風で過ごし、冬はストーブで暖をとるなど、機械に頼らないエコな生活にクライアントは大変満足している。子育ても終わり、自分たちの生活中心に自然の中で終の住処としての住まい方をじっくり見直したプランは、将来は子供たちも戻り生活が継続できるシンプルでフレキシブルな理想の形に作りあげている。
(川口 亜稀子)
主要用途 専用住宅
構  造
木造在来工法
階  数 地上2階
敷地面積
499.58 u
建築面積
116.33 u
延床面積
107.91 u
設計者  株式会社ワークキューブ
 山田 大輔
 平野 恵津泰
 桑原 雅明
 吉元  学
施工者  株式会社土樹和
 河村 一平
 加藤 典宏

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