第39回 中部建築賞入賞・入選・特別賞作品選評

審査総評


 

 第39回中部建築賞は、一般部門に57作品、住宅部門に44作品の応募がありました。
第1回審査委員会は9月13日と14日の両日に行われ、現地審査対象として一般部門12作品、住宅部門6作品を選出し、引き続き審査委員2名一組による現地審査を行いました。第2回審査委員会は10月19日に開かれ、現地審査に当たった各委員からの詳細な報告をもとに慎重な審議を行い、入賞作品として一般部門5点、住宅部門2点、入選作品として一般部門6点、住宅部門4点、そして特別賞1点をそれぞれ選定しました。

 今年の応募作品の傾向は、昨年同様小学校から大学までを含めると教育施設が全体の20%弱と最も多く、市街地再開発などの大型プロジェクトやリノベーション・プロジェクトが目立ち、それに対して公共施設の漸減があげられると思います。共通したデザインの傾向として、環境負荷低減と省エネルギー、耐震構造などの新しい技術の採用は今や当然として受けとめられる一方、都市環境に対する配慮とか既存の施設を活かしながら新しい環境を創出するというような環境的な問題、またローコストの制約のなかでいかにコスト・パーフォーマンスを高めていくかとった問題などに真摯に取り組んだ作品が多く見られました。
 審査の過程では、このような文化的、社会的、経済的なきびしい状況を受け止めながら、質の高い建築を創造していくというデザインの成熟度のようなものが評価される結果となりました。

 住宅部門は、近年希に見るぐらい多くの作品がよせられ、傾向としてはコンセプチュアルに建築の原型を前面に出そうとしたものと、それに対してむしろクライアントのライフスタイルを素直に表象したようなものの二極に分かれたように思います。
 住宅部門においても、やはりいろいろな制約のなかでのデザインの成熟度のようなものが問われた審査結果となりました。


                                 (高宮 眞介)


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