ミッドランド スクエア

所在地 : 愛知県常滑市奥栄町1-45
大正時代からの老舗窯業メーカーが創業の地、常滑の工業跡地の歴史ある窯・建物・煙突等を一部残しながらの再生計画である。1986年からほぼ10年毎に新築・改修を行い、今回(2006年)「土・どろんこ館」を建設し、外構修景により、全体を「ライブミュージアム」として完成させた.。
 今回の敷地全体の修景で街の一角が明るくなり、空が広がった気分になっている。外部は24時間一般に開放されたので、市民・来館者が三々五々訪れて和やかな楽しい風景を造っている。
 ライブミュージアムのコンセプトは敷地全体を3つのエリア(土・火・水)に性格付けし、南北5Mの段差の敷地にバリヤフリー導線を造りながら各エリヤを上手に構成している。竣工後未だ日が浅いため樹木が大地に根付いておらず、どろんこ館の擁壁、外壁も含め風情をかもし出すには、数年の時を待つことになろう。というものこの館の擁壁・外壁は「土」をテーマに版築という工法で土を積み締め固めているので、土の風化や味わいは時の積み重ねが必要になる。しかし現状でも土の持つ素朴な力感は圧倒的存在感・重量感でせまってくる。
 土のエリアにあるどろんこ館に入ろう。ホール正面に左官職人の精緻を極めた技を見せる「常滑大壁」と呼ばれる大円弧の壁があり、その流れの向うには、市民参加の手作りによる日干し煉瓦の壁がある。この大きな面積を持つ2つの壁が空間を決定づけている。左官職人の高度な技術と素人集団の素朴な技術との両極にあるこの2つの壁は個性的空間を印象づけているが、建築空間を総合的に捉えると他の左官・タイル技法も含め各々が主張し、技の展示場的要素が強くなる。一つ一つを見ていくと楽しいが、建築の脈絡が弱くなる。とはいえそれに勝る設計者・ミュージアムの館長さんや関係者の本物を作りあげていく情熱・思い入れ・エネルギーが建物のみならず、その後の運営にも引き継がれて継続している努力に敬服し、拍手を送りたい。

近藤 一郎
主要用途 博物館
構  造
鉄筋コンクリート造 一部木造
階  数 地上 2階
敷地面積
1,891.91u
建築面積
457.85u
延床面積
587.56u
建築主 株式会社 INAX
設計者 南の島工房一級建築士事務所
施工者 株式会社 東海エコン