兼六園長谷池周辺 時雨亭・舟之御亭

所在地 :金沢市兼六町池内
 特別名勝として知られる「兼六園」内の、長谷池周辺地区の整備の一貫として、新しい庭園の中に計画されたのが、この二つの建物である。
 時雨亭は、公園を訪ねる人々のための休憩場として、又茶会その他文化的な催物の場として用いられる建物であるが、何よりも先ず庭園を形づくる重要な要素として考えられた「庭園建築」と言うことができる。それは、美しく整えられた庭の一部として、優雅で、洗練された、様式的完成を持って、訪れる人に感銘を与える。時雨亭は、江戸時代に建てられ、今は失われている建物の復元という性格も持っているが、今日まで残されている資料は、全体の平面の古図と、庭側から写生した絵図のみであるので、復元的設計は主として建物のこの部分について行われ、他の部分については、新しい利用に対応した施設として計画されている。しかし設計者は、これまでの豊富な経験と知識の上に立って、考えられる限りの時代考証を行い、全体として調和がとれ、かつ想像力溢れる見事な建築をつくり上げた。又それに応じ、多様な手法を組み合わせ、入念に仕上げた大工技術も素晴らしい。
 舟之御亭は、庭園内に置かれた舟形の四阿で、庭園を散策する人の休む小亭であるが、これも、残っている絵画資料にもとづいて計画されたものである。しかし、これは復元というよりも、資料を元に新たに想像創作されたものと言った方がいい。しかしこれ又、歴史的様式に習熟した設計者と施工者のみがなし得る卓抜な出来ばえである。
 この新しい二つの建物によって、「兼六園」の価値は更に高まったことを讃えたい。  
(香山 壽夫)
構  造
木造
階  数 地上1階
延面積 
時雨亭 270.36u
舟之御亭 13.13u
建築主  石川県知事
 谷本正憲
設計者  財団法人 
 京都伝統建築技術協会
 電灯建築研究所
 理事長 中村昌生  
施工者  北国建築株式会社
 代表取締役 岡田 真
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