鈴鹿市考古博物館所在地 :三重県鈴鹿市国分町224 |
この博物館は鈴鹿市東部、四日市市との境に近い伊勢国分寺遺跡に立地している。敷地周辺は広々とした田園地帯であり、遠方からもこの博物館の三角屋根を容易に視認できる。今後国分寺跡の伽藍配置及び埋蔵文化財の発掘調査を行い、この施設と一帯に歴史公園として整備される計画である。従って、敷地周辺の景観は今後も保全される計画である。敷地内においても遺構を保全するため建築可能な部分は厳しく制限されているので、広い敷地にもかかわらず、必要な機能を3階に積層した立体的な空間構成になっている。 この建物は南北に細長い長方形の平面形で、正三角形を僅かに水平方向に広げた三角形断面の置屋根を持った大小の2棟が並列して接続されている構成である。この2棟の軸線は国分寺の伽藍配置の軸線に平行で、3階の展望デッキの正面に伽藍配置を一望できる。1階には、常設展示室、特別展示室等の展示部門、講堂や実習室などの地域活動に関係する部門、そして、出土した文化財の搬入や整理のための部門が配置されている。2階は研究及び収蔵部門で、3階は機械室、倉庫、展望デッキなどである。外壁はグレー系統の磁器タイル張り、一部コンクリート打放しで、あまり派手な外観にならないよう配慮が感じられる。屋根はフッ素銅板瓦棒葺の三角形の置屋根の下に設備機械関係が収められていて、景観への配慮が為され、同時に収蔵庫などの断熱にも役立っている。 建築面積を厳しく制限されながら、コンパクトに必要な機能を持った空間をまとめ、景観への配慮、眺望などの点にも配慮が為され、国分寺遺跡の整備拠点としてシンボル的な存在になることと考えられる。以上により中部建築賞の入選に十分値するものである。 |
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(松下聡) | |||||||||||||
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